山田 怜さん
独立行政法人国際協力機構(JICA)(2023年現在)
鎌女で学んだこと。それは、知識や技術だけではなかったように思います。10代という多感な時期に、鎌倉から世界まで、たくさんの景色を見せてもらった。そのなかで、私の人生を左右する興味や関心を高めることができたように感じています。
具体的に言えば、英語。鎌女は英語の教育にとても力を入れていて、それは受験英語というより、コミュニケーションツールとしての生きた英語、世界に通用する英語を軸とした学びでした。自分の「あたりまえ」が、他の人の「あたりまえ」ではない。異なる価値観との交流のなかで、英語を習得できれば、多様な世界をもっと知ることができるかもしれない、という思いが芽生えました。そんな風に英語への興味を深めた私は、いつしか、鎌倉から見える海を越えた世界へ思いを馳せるようになりました。
卒業後、私は大学で国際政治学の学びを深め、海外の大学院への進学を果たしました。そこでの目的は、開発学を研究すること。開発学では開発途上国における社会・経済の開発課題をはじめ、気候変動や保健医療、紛争などの世界が直面する複雑で深刻な課題を扱い、学際的なアプローチをとります。身近な例を挙げると、すべての国や地域の人とともに持続可能な世界を築くために取り組む具体的な目標である持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)はまさに開発学の領域にあるものです。日本を離れて研究に打ち込む日々は刺激的で、あっという間だったように思います。
大学院での研究を生かして、今はJICAで多文化共生社会の構築、特に外国人材の受入れに係る取り組みを推進しています。私も含め、世界中には多様なルーツを持つ人がいる。その全員が、等しく活躍し社会を共に創っていくこと。それが目標のひとつです。どんな背景があっても、馴染みのある土地を離れ、新しい場所で生活・仕事をするのは不安がつきもの。その不安を取り払うために何ができるか、政府関係者から地域に住む外国人まで、あらゆるステークホルダーと関わり合いながら、めまぐるしくも充実した毎日を送っています。
鎌倉というローカルな場所で見つけた小さな好奇心。それが今につながり、海を越え、世界中のさまざまな人々と関わる仕事へと広がった。たった6年間と思われるかもしれませんが、私にとってはかけがえのない6年間だったように思います。もしこれから鎌女に入学する方にアドバイスを贈るなら、自分が好きだと思ったこと、楽しいと思えることを、とことん突き詰めてほしいと思います。いつか、きっと、点と点がつながって、夢中になれることにたどり着くはずです。